人的資本経営

人的資本経営

経営理念「人生に潤いと豊かさを。よりよく生きる喜びを。」の実現にむけて

経営戦略と人財戦略の連動

近年の社会や価値観の変化に合わせて、葬儀業界も進化しています。葬儀・供養スタイルの多様化、小規模・簡素化嗜好へのシフト、単身高齢世帯の増加など、事業環境・顧客志向に鑑み、当社グループの事業戦略もそれらのニーズに見合うものにする必要があります。また、その担い手である従業員に求めるスキル、行動の在り方も変えていく必要を認識しています。

当社グループは2032年度に創業100年を迎えますが、これまでの「大切な人との最後のお別れに寄り添う葬儀事業者」というお客様との信頼に根差した在り方は引き続き大切にしつつ、今後は「シニア世代とそのご家族に寄り添い、ささえるライフエンディングパートナー」への進化を実現させるのが、当社グループの10年ビジョンです。その事業戦略として、「葬儀事業の拡大」「ライフエンディングサポート事業の拡大」「葬儀事業の競争力強化」「日本一満足・感動いただけるサービスを目指した仕組み強化」「経営基盤の強化」を掲げており、その実現に必要なスキル・専門性を備える人財を採用・育成・獲得していくこと(下図「人財の育成・確保」)が必要です。また、そうした事業変革を担う従業員に求める行動として、「ホスピタリティのこころ」を持った上で、過去にない変化へチャレンジしていく「主体性」、そして専門能力を発揮しながら変革をやり抜く「実行力」を有する人財を増やしていける組織風土作り(下図「組織風土の変革」)にも取り組んでいます。当社グループの進むべき方向性であるパーパスや経営理念に共感する従業員の土壌を築きつつ、人的資本の側面から事業戦略の実現性を高めるためのこれら両輪の取り組みを継続させた先に「挑戦し続ける組織風土」として常態化され、結果として中長期的に企業価値が向上し続けていく、それが当社グループの人的資本経営の考え方です。このような組織風土が根付いているか否かを確認するための指標として、当社グループの人的資本経営では「従業員意識調査」で従業員エンゲージメントの結果を取締役会で適宜モニタリングしています。

経営理念・パーパスの浸透

ここでは、当社グループの経営理念・パーパス浸透の取り組みの考え方について記載します。

当社グループの経営理念のミッション「人生に潤いと豊かさを。よりよく生きる喜びを。」は、葬儀事業からライフエンディングのトータルサポート事業へ、また新規事業の展開へと新しい価値を創り出すことに挑戦しつづける当社が、商品やサービスを通じてお客様と地域の人々の人生に潤いと豊かさを感じてもらうこと、よりよく生きる喜びを感じてもらうことが社会に果たすべき使命であるということを意味しています。加えて、2022年4月に私たちの社会に対しての存在意義、存在価値をあらためて定義し、当社グループのパーパスを制定しました。私たちは、シニア世代とそのご家族との長期にわたる関係を築きながらトータルサポートを提供することによって、その方の人生によりそい、支えてまいります。

2023年度から2024年度にかけては、全ての従業員に経営理念・パーパスを浸透させるために、グループ各社の社長が執行責任者となり、社長・部門長自らが課題設定およびコミットメントを行い、各社ごとに経営理念・パーパスを実践するために必要な行動を明確にし、日々の業務活動で実践していく取組みを行ってまいりました。その結果、従業員意識調査の『経営理念』のスコアが、2024年度は3.4点(5.0満点中)となり、2023年度の3.3点から上昇いたしました。(注)

  2023年度 2024年度
経営理念 3.3 3.4
(注)
結果は、燦ホールディングス(株)、(株)公益社、(株)葬仙、(株)タルイ、エクセル・サポート・サービス(株)、ライフフォワード(株)の6社の集計値。
統合直後となるため、(株)きずなホールディングスおよびその連結子会社3社は集計対象外。

特に、「日本一満足・感動いただけるサービス」を実現・達成していくための組織を作るには、当社グループで働く従業員ひとりひとりが経営理念・パーパスに込められた経営の想いを理解し、会社への帰属意識を高めてもらうことが不可欠です。今後も従業員が経営理念・パーパスを理解し、自分事化し、主体的な行動に反映できるような施策を継続的に実施していく予定です。また、定期的な従業員意識調査の中で経営理念・パーパスの従業員への浸透状況をモニタリングし、引き続き浸透活動を進化させていきます。

人財育成方針

ここでは、「人財の育成・確保」として、事業戦略の実現に必要なスキル・専門性を有する人財を採用・育成・獲得していく考え方を中心に記載します。

葬儀単価は下落傾向にあるものの、死亡数は当面増加傾向にあり、我が国の葬儀市場は大幅な成長は難しいまでも一定の市場規模の維持は可能と考えています。それらを踏まえ、環境変化に対応した事業推進ができる戦略企画・将来の経営幹部候補人財の育成・確保を進めております。具体的には、採用競争力のある条件提示を可能とする人事制度の導入によって優秀な人財を外部から確保するとともに、早い段階から経営視点の知識獲得と意識醸成を目的に、新任管理職研修や選抜リーダー研修を実施しております。2024年度は特に、戦略企画・経営幹部に求められる力である「組織・人を動かす力(=組織運営力)」を高めることに焦点を当てて、研修を実施いたしました。2025年度には、素養と意欲を持った社員を選抜して、経営視点での戦略企画・実行スキルを獲得してもらうことを目的とした、教育プログラムの策定(燦ビジネスアカデミアの立上げ)も予定しております。

既存の葬儀サービス事業では、2023年3月に立ち上げた新家族葬ブランド(エンディングハウス)を中心とした出店加速により葬儀事業エリアと顧客ターゲットを拡大していく必要性から、葬儀サービス人財の確保、および戦力化を進めております。特に葬儀サービス人財は、これまで以上に新卒および中途採用を強化することで人財の確保を進めております。また、採用した人財を戦力とするための当社オリジナルの人財育成プログラムを開発し、葬儀サービス人財の育成とサービス品質の向上に努めております。

新事業・サービスとしては、終活から葬儀後までのライフエンディングサポート事業分野を拡大し、お客様と家族の長期間のサポートを実現させるとともに将来の柱となる事業に育てる計画を掲げております。それにあたり、シニア世代に向けた終活サービスのポータルサイトを通じた商品・サービスの提供を事業内容とするライフフォワード(株)の売上拡大・収益化を最重要課題の一つに位置付けています。その担い手として、マーケティングの専門性を有した人財の育成・確保が急務です。特にデジタルマーケティング領域においては、優秀な人財の中途採用に注力しております。また、新事業・既存事業ともに当社グループ全体においてマーケティングスキルの向上が重要と考えており、引き続きマーケティングスキル向上の研修等を強化してまいります。

加えて、当社グループでは、死別等によって悲嘆されているご遺族の立ち直りのサポートの一助となるべく、社会貢献活動としてグリーフケア活動を行っております。ご遺族の悲しみを癒し、前向きに生きるエネルギーの源になって頂くための遺族サポートを行う「ひだまりの会」を2003年12月に立ち上げ、これまで1,000名を超えるご遺族の方々のサポートをしてまいりました。また、グリーフケア活動の一つであるエンバーミング(ご遺体に消毒殺菌・防腐・修復・化粧をし、生前のお姿に近づける技術)処置は、今後さらに重要性が増すと想定しております。昨今の新型コロナウイルス感染症等のパンデミックリスクだけに留まらず、今後、日本では地震や台風・水害等の大きな自然災害が発生することが想定されており、自然災害等でお亡くなりになった方に対してエンバーミング処置を行うことで故人の遺志や残された人たちの想いを十分に葬儀に反映することが可能となります。このようなグリーフケアを通じた社会貢献活動は、当社グループの社会価値向上のための非常に重要な取組みといえます。葬儀サービスだけでなく、グリーフケア活動まで担うことができる人財の育成を強化しており、エンバーミング処置ができる日本遺体衛生保全協会(IFSA)認定のエンバーマー資格保有者は現在31人(2025年3月末時点)で業界最大規模の人数となっております。今後もエンバーマー資格保有者の確保と育成に取り組んでまいります。

また、当社グループは、日本一満足・感動いただけるサービスを目指し、人のこころに寄り添うホスピタリティあふれるサービス・商品・空間(会館)を、妥協することのない質の高さをもって実現し、お客様にお届けすることが企業価値の源泉と考えており、これを実現する人財育成とクオリティマネジメントを徹底しています。ひとりひとりがプロフェッショナルとして質の高いサービス提供ができるように教育研修の専門部署を設けてサービス品質の向上を行っております。具体的には、入社後に教育専門部署による葬儀サービスの教育の機会を設け、厚生労働省認定「葬祭ディレクター技能審査資格」の資格取得に努めており、現在有資格者は業界でも最大規模となる507人(2025年3月末時点)となっております。こうした取り組みによってホスピタリティ溢れるサービスを提供していくことでお客様の満足度の向上に努めております。

社内環境整備方針

ここでは、「組織風土の変革」として、「ホスピタリティのこころ」を持った上で、過去にない変化へチャレンジしていく「主体性」、そして専門能力を発揮しながら変革をやり抜く「実行力」を有する人財を増やしていく社内環境作りの考え方について記載します。

当社グループは、従業員のモチベーションを高め主体的に自らの成長を促していくことを目的に、当社グループ独自の葬儀サービス人財の役割に応じたディレクターサービス認定制度を導入し、運用しております。年1回の認定評価を通してディレクターの葬儀施行サービス品質の可視化を行い、従業員ひとりひとりが自身の評価と課題を把握し、レベルアップを目指すことで、組織としてのサービス品質の向上にもつなげております。また他にも、入社3年未満の従業員をサポートしモチベーション向上を図るためのメンター制度や様々な表彰制度、エリア(地域限定)社員を対象とした新たなインセンティブ制度を導入することで、従業員ひとりひとりが職場の中で主体性を持って挑戦と実行ができるような組織づくりを行っております。

さらに、超高齢社会の労働力人口が不足する中で、シニア人財がより長く当社グループで活躍する機会を創出することにも力を入れております。具体的には、これまで65歳までだった継続雇用制度を70歳までに延長し、よりモチベーション高く働いてもらうための人事制度を2023年度より導入しております。その他、多様な働き方を実現するための環境整備も行っており、テレワーク制度導入によるリモート勤務に必要なインフラ整備(ペーパーレス・電子化)や次世代育成手当の支給、障がい者雇用の強化、一部職種向けの副業制度も導入しております。今後は、女性活躍の推進にもより一層努めてまいります。

加えて、コンプライアンスを重視した組織風土の醸成にも力を入れております。役員・従業員が遵守すべき規範、普遍的な考え方を「行動規範・行動基準」としてまとめた「コンプライアンスブック」の全役員・従業員への配布とヘルプラインを周知するほか、コンプライアンス研修・個人情報保護(PMS)研修・ハラスメント研修等の定期的、継続的な教育を実施することで、コンプライアンスに対する意識向上を従業員に対して取り組んでおります。

組織風土

以上、当社グループの進むべき方向性である経営理念・パーパスに共感する従業員の土壌を築きつつ、人的資本の側面から事業戦略の実現性を高めるための取り組みとして、「人財の育成・確保」「組織風土の変革」を両輪で継続させた先に、「挑戦し続ける組織風土」として常態化されているかを確認するため、従業員意識調査で従業員のエンゲージメントスコア(働きがい)を最重要KPIと設定し、モニタリングしております。2024年度の従業員エンゲージメントのスコアは3.8点(5点満点中)でした。このエンゲージメントスコアは3.5点以上を基準にしており、2023年度から継続して高い状態を維持しています(注)。今後も継続的に「挑戦し続ける組織風土」を常態化させるための各種施策に取組み、エンゲージメントスコアの向上に努めてまいります。

  2023年度 2024年度 基準値
従業員のエンゲージメントスコア(働きがい) 3.8 3.8 3.5
(注)
結果は、燦ホールディングス(株)、(株)公益社、(株)葬仙、(株)タルイ、エクセル・サポート・サービス(株)、ライフフォワード(株)の6社の集計値。
統合直後となるため、(株)きずなホールディングスおよびその連結子会社3社は集計対象外。